高尾山の山頂

高尾山稲荷山コースを登る

何故だかわからないがふと歩くということに興味を持った。

高尾山に来たのは何年振りだろうか。最後に来たのは少なくとも20年以上前のことだと思う。そのくらいご無沙汰だったわけだ。

そもそも何故高尾山に来たのか?

正直山だったらどこでも良かった。今年の健康診断の結果はすこぶる悪かった。今までも数値が良かった訳ではない。今年の結果が特に悪かったのだ。具体的には脂質と痛風が悪い。飲み過ぎもあるのだが運動不足もあった。

運動・・・。フリーのインターネット広告代理店を生業としている俺はほとんどの時間をPCの前で過ごしている。ジムに行くのは億劫だ。ジムで独りで運動をしているイメージが湧かない。人と交流するのも面倒くさい。「とりあえず歩いてみようか」それがきっかけだった。

歩き始めて3ヶ月経つと体に異変が現れた。異変というか良好なのだろうが、体重が落ちてきたのだ。俺は結果が出るものに対して特に興味を持つ人間だ。だからネット広告の代理店をしている訳でもある。インターネット広告は広告効果が明確に数字で出る。コンバージョン率アップのために日夜取り組み、クライアントに評価をいただく。歩いて体重が減るというPDCAが回るとさらにやる気が出てしまうからタチが悪い。

しかし、夏場に入ると歩く回数が減った。単純に暑過ぎるからだ。フリーのネット広告代理店の立場としてはダウンをする訳にはいかない。体調維持も仕事のうちなのだ。「街中を歩くよりは山の方が涼しいかな」それが山に登ろうと思ったきっかけだ。高尾山なのは久しぶりの山にはちょうどいいかなと考えたからだ。

午前9時、高尾山口駅に到着

高尾山口駅には午前9時に着いた。駅にはそこそこ人がいた。当然これから高尾山を登ろうというのだろう。高尾山口駅前には高尾山のコース案内図があった。「ほう。結構色々なコースがあるんだな」子どもの頃にどのコースを登ったのか覚えていない。俺は高尾山をよく知らないのだから考えても始まらない。とりあえず一番左の稲荷山コースを選んだ。迷った時は左を選ぶことにしているからだ。

稲荷山コースに入るといきなり急な階段があった。「意外ときついな」久しぶりの山登りだからか、最初は登りきれるか不安になった。しかもすぐに汗が吹き出た。

「まだ始めたばかりだぞ」

自分に言い聞かせるように呟いた。俺は作業に没頭する時は余計なことを考えないようにしている。考えるのは作業に入るまで。作業中は何も考えずに集中した方が早いし間違いも起きない。インターネット広告の仕事は地味な作業もたくさんある。その都度考えていたら到底終わらない。だから考える時とそうでない時を明確に区別するようになった。そんな仕事スタイルを山登りにも取り入れてみた。というか知らないうちにそうなっていた。
「苦しい」とか「つらい」とかネガティブなことを考えても始まらない。「右、左、右、左」交互に足を出し続けた。息は鼻から吸って口から吐く。10分ほど歩いていたら体が慣れてきたのか、歩くことが楽しくなってきた。

途中で何人か追い抜いた。これも楽しいと感じた点の一つだ。人を抜かすとレースゲームをやっているかのような気分になった。別に競いあっている訳ではない。そんなことは承知の助だ。俺は成果が出ることが好きなだけだ。抜いた人間の数だけコンバージョンした気分になっただけだ。
途中で休憩をしている人もいたが俺は止まらずに歩き続けた。平坦な道もあったので歩きながら休憩できたからだ。あえて止まる必要はないなと感じただけだ。

山登りの途中で携帯にメールが届いた。仕事からメールの連絡は多い。いつもならメールが届いたらすぐにチェックをするのだが、今日は見るのを止めた。もしメールを見て即時対応をしなければいけないとしてもすぐに対応できないからだ。
いや、正確にいうと対応したくないからだ。
山道でPCを開いて作業をするのは嫌だからだ。休憩所で作業をするのはいい。でも山の道端で作業はしたくない。どうせ仕事ができないのならメールを見ない方がいい、そんな判断からメールチェックをするのは止めた。

それよりも景色を楽しもう。稲荷山コースは山道なのだがそんなに歩きづらくはなかった。きちんと登山道が用意されているのだろう。途中の休憩所も椅子とテーブルもある。山登りは久しぶりなのだが、ちょうど良い選択だった。
歩き始めて1時間ほどで開けた場所に出た。高尾山の山頂だ!

「えっ、もう着いたの?」

正直な感想だった。思ったよりも高尾山は早く登ることができた。案内図には稲荷山コースは上り90分とあった。俺は1時間で着いてしまった。自分の登山ペースを認識することができた。仕事柄、物事をデータ化してしまうのだから困ったものだ。

山頂、そして下山

山頂に着いたらお昼を食べようと思っていた。しかし、今の時間は午前10時。まだお店もやっていないし、お腹も空いていなかった。トイレ休憩をしてシャツを着替えを済ませたら下山をすることにした。お昼の時間まで山頂にいるよりも麓で温泉に入ってからお昼を食べることを選んだからだ。

俺は決めた時の行動は早い。これも仕事スタイルなのだが、行動力には定評がある。素早く行動するからこそ、結果が伴わなくても次の一手が選べる。最初にあまり考え過ぎず、行動した結果から考えるようにしている。そんな仕事スタイルにマッチしているインターネット広告が俺の仕事だからだ。

帰り道はほとんど下り坂だ。下りは体の負担は結構あるが精神的な負担は少ない。俺が苦痛になるのは同じ道を歩くことだ。だから帰り道はあえて違う道を選択した。

途中吊り橋を渡った。高いところは苦手な俺だが、高尾山の吊り橋は怖くなかった。この吊り橋はみやま橋というらしい。吊り橋があるコースは4号路だ。そこから1号路へ入り高尾山口まで下山した。1号路は舗装された道なのだが、坂が急なのでスローペースになってしまった。正直稲荷山コースよりもきつい気がしたのは俺だけだろうか。

下山後、駅前にある京王高尾山温泉「極楽湯」に入った。ひとっぷろ浴びた後、ちょうどお昼だったので天麩羅蕎麦を食べて本日の登山は終了だ。今度はもう少し歯ごたえがある山に登りたいと思った。
「山登りって結構楽しい」
素直な感想だ。

高尾山DATA

上り:1時間(稲荷山コース〜山頂)
下り:1時間(山頂〜4号路〜1号路)
[極楽湯]
住所:〒193-0844 東京都八王子市高尾町2229番7
営業時間:8:00~23:00(年中無休)